涼宮ハルヒの憂鬱
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2006/07/28
- メディア: DVD
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ネタバレ無しの感想としては、オタクが好きそうな要素をとにかく全て詰め込んだアニメだと。いわゆる萌えキャラの配置はぬかりが無いもので良く(?)比較に出されるエヴァンゲリオンで例えれば、キョン=シンジ、ハルヒ=アスカ、長門=レイ、古泉=カオル、みたいな感じで置き返れる。エヴァンゲリオンはまともに見てないからそこんとこ詳しくは分かんないけど。
それなりに魅力的なキャラを配置し、動かすだけで面白いアニメになるのだけれどストーリーもこれまた凄い。原作通り(らしい)あえて時系列を無視した放送順序で、普通に見ていたらワケが分からなくなるのはご愛嬌だけど、学園ドラマかなぁと思って見ていたらいきなり話の本筋が世界の成り立ち、宇宙の真理にまでぶっ飛んだ時は度肝を抜かれた。小難しい話は時にオタクの心を鷲掴みにするもので、また例えに使って悪いが、いきなりぶっ飛んだ話になるという意味でははたまたエヴァンゲリオンと酷似していると思われる。エヴァンゲリオンは製作者が途中で嫌になったのか風呂敷を広げまくって解釈を丸投げにしたアニメだったのだが、涼宮ハルヒの憂鬱は(今のところ)伏線を回収し綺麗にまとまっている。そしてとどのつまりはある一点に物語の本質があるのだけど、その持って行き方が実に見事。
キャラやストーリー、どれをとっても実にオタク受けするアニメだと思う。作者がそれを狙って書いたかと問われれば十二分に意識したと思われるんだけど、「こんなのがオタク共にはウケるんだろ、ふふん」ってな姿勢だとその作品はタカが知れているワケで、逆説的だがオタク受けする要素を若干意識しつつも物語の焦点を描きたいという一心でこの作品を書いたのだろうなぁと思う。
ダラダラと書いたんだけども、結論としては非常に面白いアニメでした。少し趣向を変えればもっと一般ウケしそうなんだけどこれはこれで良いと思いました。
※以下ネタバレ※
途中から「この世界はハルヒが創った世界」というセカイの本質が提示されるワケなんだけどこれがビックリ。うわぁーなんなんだこのアニメはと思いましたね。そのハルヒを研究する為に未来人、宇宙人、超能力者がハルヒとコンタクトを持つワケですが、それすらも「日常に飽き飽きしているハルヒが通常では考えられないようなモノの存在を望んだからそこにいるのではないか」という解釈を提示されてびっくり。
その中で唯一思い通りに動かないのが主人公(?)であるキョンであり、ハルヒを奇人変人として無視する大多数や、ハルヒと積極的に関わり合いを持とうとする稀有な存在でも無く、キョンだけはハルヒにつかず離れずの関係を維持し望んでいる(いた)ワケで、そのような唯一無二の存在であるからこそ、ハルヒはキョンに惹かれてしまったのだろうと思います(3年前に出会っていてそれが全ての始まりであるという分かりやすいエピソードも用意されているワケだけども)。そしていつしかキョンも知らず知らずのうちにハルヒに惹かれて行き…。とまぁなんともお互いがお互い絵に描いたようなツンデレっぷり。
これこそが物語の本質であるのです。これを軸にこのセカイは回っていて、世界の成り立ちなどの話はこれに色をつけるものでしか無いのです。大掛かりな舞台があるのだけど、結局行き着くところは恋愛物語…この構図はデビルマンを彷彿させられます。デビルマンは現代の黙示録と評される名作であって、涼宮ハルヒの憂鬱とデビルマンは作品の方向性やテーマも全く違い、作品としてのパワーも違いすぎるのですが、この類似性は見るべきものがあると思います。
大掛かりな舞台の上でやっている事は所詮は恋愛沙汰…。この構図は実に美しい。デビルマンはそれによって(謀らずしも)儚さを演出し、涼宮ハルヒの憂鬱はツンデレの美しさを演出しました。繰り返しますがこの構図は本当に美しい。ツンデレはかくも美しいものなのか。未見の人は是非に!