るろうに剣心星霜編
るろうに剣心-明治剣客浪漫譚- 星霜編 ~特別版~ [DVD]
- 出版社/メーカー: SME・ビジュアルワークス
- 発売日: 2002/10/09
- メディア: DVD
- 購入: 1人 クリック: 214回
- この商品を含むブログ (23件) を見る
内容の方はこれまでの剣心の人生を薫視点の回想で描き、最期に剣心と薫の人生の行く末が語られる、というもの。少年誌的な面白さを一切カットし、「るろ剣」の暗の部分になっているものを青年誌で思いっきり表現するとこういうものになるんだろうなぁというもの。
原作者の和月は元来「少年誌らしい漫画を描きたい」という欲望を持っていた人間*1で「るろ剣」は影に重いテーマを背負いながらも少年誌の代名詞であるハッピーエンドに拘った作品だった。その為人誅編でヒロインを殺す事ができず「贖罪」というテーマを描き切れなかったし、ラストシーンも「皆幸せになって良かった良かった。ハッピー」という感じで明るく締めくくられてる。少年誌としてはあれで正解だと思うしあの終わり方に特に不満があるワケではないが、あくまでも「少年誌」としての終わりなのだ。逆にその後の剣心の人生を辛辣に描いたこの星霜編は青年誌的なラストと言えるだろう。
原作のラストを読むと剣心は家庭もでき、後継者も育ち、戦いの呪縛から解き放たれ明るい未来に向かって歩んでいく…というような想像をかきたてられるのだが星霜編はそのようなファンタジーを物の見事に粉砕している。星霜編で語られたその後の剣心の人生は客観的には決して幸福なものでは無い。それはその家族の薫や剣治も同様で境遇だけをみると限りなく不幸であったと言えるかもしれない。だが星霜編のラストの剣心の満面の笑みを見ると、贖罪という十字架を背負いそれを自分のできる限り(例えそれが自己満足であったとしても)果たした剣心はある意味で幸福な人生を送れたと思う、そしてその男に寄り添い見届けた薫も。
これを見た後は原作の終わり方は少年誌的な配慮を加えた非常に無難なラストであるとつくづく思う。原作の明るい空気が好きな人は星霜編は到底受け入れられないものであろう。だがこの星霜編こそが贖罪という重いテーマを抱えたあの作品の本当のラストにふさわしいのではないだろうか。リアルタイムで原作を読んでいた人は是非。