ドニー・ダーコ

ドニー・ダーコ [DVD]
率直な感想としては「ワケが分からん」この一言に尽きます。


サスペンス、青春、ホラー(?)、ミステリと様々なジャンルを含んでいるのが当作品。先が読めないのと、ウサギの出現のポイントが絶妙で「サスペンス」「ホラー(?)」としての要素は非常に良いと思います。主人公が精神異常をきたしているというのも中々良いポイント(精神に異常をきたしている人間を描いた作品はそれだけで怖い事が多い)。「青春」に関しても、主人公と彼女とのやりとりやストーリ全般(一部ネタバレの為後に記述)から思春期の男の心情が読み取れ良い出来だと思います。しかしミステリ部分が全くダメだと思いました。膨大に張られる伏線、しかしそれをストレートに消化しているのは半分程度で残りの半分は何処にどう絡んでいるのか熟考しなければ分からないレベル。人によって好みはあるのでしょうけど僕は「如何にさりげなく伏線を張るか」その後「如何に鮮やかに消化するか」というのを基準にミステリを評価します、というかそのような部分が良く出来ている作品をみたら無条件で感動してしまいます。当作品の伏線の張り方は「鮮やか」では無いのですが、ワケの分からん伏線を立て続けに張りまくるという手法を使っていて、実はこういうのは大好きなんで伏線の張り方は文句無しです。しかし消化の段階がダメダメです。映画の後半伏線が消化されているのかどうか良く分からずにクライマックスに向けて突き進むストーリーは観ていて不快感すら感じました。そしてワケの分からんまま物語がストーリーが進むのでラストのシーンも「?」って感じです。本当は感動的なラストなんだろうけども。


この映画は一回観ただけでは9割9分の人はほとんど理解できないと思います、なので何回も観るための映画です。僕は何回も観ようと思う程魅力を感じ無かったので、もう観る事は無いでしょう。カルト的な人気(ちなみにネット上では否定的な意見はほとんど無し)があるようなのでこれはこれでいいんだと思うんですが、僕の肌には合わない作品でした。(以下ネタバレ)








※ネタバレ※
鑑賞直後の感想は「タイムスリップ後、彼女を守るため(?)自ら命を絶った主人公」というもの。流石にラストの彼女と主人公の親のやり取りには哀愁を感じずにいられなかったのですが、それ以上に消化されているのかされてないのか良く分からない伏線の事が気になって仕方無かったです。以下、色々な批評を読んだ上での個人的な見解でのストーリー解釈です。


主人公の街は何回かタイムスリップしていて、2〜3週目から物語は始まります。ストーリーの序盤とラストで主人公の部屋に降ってきたエンジンはタイムスリップの原因となった飛行機のエンジン。物語の肝である謎のウサギはフランクと名乗っているが実は未来を経験してきた主人公本人。ウサギは世界の破滅を予言し、同時にそれから逃れる術がある事も暗に示す。ウサギを救世主だと信じ、ウサギに言われた通りに行動する主人公。街の人々はタイムスリップのループを経験している為本能的にそのループから脱出するために真の救世主である主人公を緩やかに誘導する。ウサギことフランクが悪の根源を殺してくれると信じて最後までウサギに導かれるように行動する主人公だがそこに現れたのは彼女(事故とはいえ)を轢き殺したどうみても救世主に見えない男。感情的にその男を撃ち殺した時主人公はウサギが自分自身であった事に気付く。彼女の死体と穏やかにタイムスリップを迎える時主人公はこれが逆らう事のできない運命だと悟り、未来を変えるには自分が死ぬしか無いと覚悟を決める。覚悟を決めた主人公はタイムスリップ後も記憶を残していて軽やかに笑いながらエンジンが落ちてくるのを待つ。


というのが僕が精一杯想像した解釈です。ほとんどの伏線はこれで説明できて一見筋も通っているように見えます(主人公が彼女を連れまわしたのが死因ではないか→運命は変えられない…など)。しかしこれでもなおいくつかの謎が残るのです。例えばデブの女の子関連の謎とか(特に「ドニー・ダーゴ」いうノートを所持していた事)。ただ単に主人公の妄想か夢であったと解釈すれば何でもアリなので一発なのですが、さすがにそれは酷すぎる。あまりに難解なので監督が劇場でラストを解説したとかいう話も読んだ記憶があるので(ソース無し)、製作陣は明確な答えを用意していると思うのですが、それは本意じゃないんだと思います。色々な解釈が出来るように難解な伏線を張りまくって万人が万人の感想を持つ(持てる)のがこの映画の正解なんだと思います。それはそれでアリだと思います。しかし難解過ぎて「答えが無いのが答え」と気付くプロセスにすら初見では辿りつけないのが辛かったです。結局は上にも書いたように僕の肌には合わない映画でした。


※追記※
デブの女の子は主人公(ドニー・ダーゴ)が好きだったのようなので、それに関するノート、もしくはラブレター(大きすぎるかもしれないけど)かもしれません。しかしそれでもなお僕には説明不可能な伏線がいくつかあります(死神ババアの本とか)。主人公の精神異常が(一部でも良いので)絡んでいると考えれば辻褄は合うものの、そうなるとやはりラストが悲しすぎます。