好きなモノなら金を出して買え

大好きな東野圭吾のエッセイを買って読んでいたら「ブックオフや図書館で本を買ったり借りたりしている人はそれを決して賢い本の読み方などと思ってはいけない」というような内容の事が書かれていてその理由は「ブックオフや図書館を利用する人は本を出版している出版社や小説家に金を払って無い」というものでした。


この問題を少し掘り下げて書かれている文章もありましてその内容は「小説家には利益を出す小説家と利益を出さない小説家がいる。利益を出さない小説家は利益を出す小説家に食わせてもらっている。」というもので「利益を出さない小説家は利益を出す小説家に食わせてもらっている間に自分でも利益を出す小説家になれるように努力する」という事でした。これは出版社側から見たら「未来への投資」というところでしょうか。東野圭吾本人もデビューから10年間程は食わせてもらう立場にあって、その事に感謝していて自分の本が売れるようになった現在はその利益を食えない小説家にどんどん回して欲しいというような事が書かれていました。


なるほど、これは分かりやすい。今まで売れない作家はどうやって生活しているんだろ?という素朴な疑問がありましたがこれで少し謎が解けた気がします。現実の社会と同様に作家間のコミュニティ(と呼んでいいのか分かんないけど)で富の再分配が行われていたのですね。これは多分音楽、漫画、ゲームなど他の分野でも程度の差こそあれ同じような事がおこっているのではないでしょうか。昔どこぞのサイトでCDは最低10万枚売れないと利益が出ないと書いてあるのを見て10万枚もCDを売れないアーティストは腐るほどいるんだけどそういう人達どうしてるのだろうと思った事がありましたが、何の事は無い100万枚売るような人達に食わせてもらっていたんでしょう。


売れない人達に投資をするのは一見すると無駄な事だと思いがちですが、そうではないです。誰もがデビューから利益を出すほど高いパフォーマンスを見せれるわけがありません。小説で例えるなら現在売れっ子作家の仲間入りとなった東野圭吾もデビューから10年程は他の作家から食わせてもらわねばなりませんでした。そしてその時期があったからこそ現在面白い小説を多く書けるようになり売れるようになったのです(デビュー当時から面白かったというツッコミもあろうかと思いますがここでは敢えてそれを無視します)。「未来への投資」を馬鹿にしてはいけません。


冒頭でも書いた通りブックオフなど中古店で商品を購入する事は出版側に一銭も入りません。それで売れっ子の本、CD、漫画、ゲームが買えなくなる事はないでしょう。彼(彼女)らはそんな事で食えなくなる事はないから。しかし「未来への投資」は滞ります。利益が上げられなくなれば当然そうなります。そうなると近い将来どうなるか?有望な新人が出てくる確率が減ることになるので当然その分野は衰退します。


はっきり言って「中古で売買する」という行為そのものが作家、アーティスト、クリエイターの未来を潰しているのです。


人間だから中古ショップを全く利用するなとは言いません。しかし本当に本が好きなら、漫画が好きなら、音楽が好きなら、ゲームが好きなら、少し言い方を変えると、面白い本をもっと読みたいのなら、面白い漫画をもっと読みたいなら、良い曲をどんどん聴きたいのなら、面白いゲームをもっとやりたいなら、正規の価格で新品を買い使い終えた後もそれは大事にとっておきましょう、少なくとも自分が気に入ったものは。中古ショップを利用する事は文化の破壊であると認識するべきです。