「落・乱」についてかく語りき

落第忍者乱太郎 (40) (あさひコミックス)

落第忍者乱太郎 (40) (あさひコミックス)

なんか唐突に思い出したので「落第忍者乱太郎」という漫画について少し語ってみようと思います。


この漫画は僕と同じくらいの世代ならほとんどの人がよく知っているのではないでしょうか。そしてそれに連れられてみていた親世代。さらに現在の小学生。幅広く読まれている「サザエさん」「ちびまる子ちゃん」のようなファミリー漫画、アニメになりました。まぁ前2つの作品は別格なのでそれには遠く及ばないわけですが。


この漫画実は「リアル路線」を地で行く漫画でもあります。子供向け漫画なのでどうしようもないギャグや作中の実力者がファンタジーのような忍術を披露する事はありますが、主人公達が使う忍術は全て「実際の忍者はこのような地味な事をしていたんだろうなぁ」という地味な忍術しか使いません。水の上を歩いたり、火を吐いたり、突然風の如く姿を消したりなどというファンタジー忍術は一切無いです。それは作者尼子騒兵衛先生が歴史学を専攻したらしいので、その綿密な知識を元に描かれたものだと思います。実はこれ僕の感性に結構大きな影響を及ぼしていまして「騎馬隊だけで押せ押せで攻めていた武田軍はファンタジー」「槍は突くものでなく叩くものであった」というリアル戦国漫画を目指している「センゴク」あたりを好んで読んでいるのは、「落・乱」の影響なんだろうなぁと思っています。


そのような地味なリアル路線をとりながら子供人気を得たのは作者のセンスが大きいと思います。絶妙なところで「これは嘘」というようなファンタジー忍術を繰り出してみたりギャグを挟んでみたり…。年齢を重ねた今だからこそ氏の偉大さが少しずつ理解できてきた感があります。


そして実は僕、15年前くらいに尼子騒兵衛先生に会っているんです。Wikipediaによれば当時30代半ばだったハズなのですが、僕の記憶では当時20代半ばなハズでWikipediaはてなの表記が間違っているんじゃないかと思いましたが、ネットを漁っていましたら現在の画像を発見致しましてそんなものなのかもしれません。大体単行本の後ろに生年月日は表記してあったハズでそんな基本的なミスをWikipediaがしているとも思えませんし。


話が横道にそれましたが当時「落・乱」のサイン会があるという事で僕はワクワクしながらサイン会に向かうわけです。しかしそれらしい人はどこにもいない。和服姿のお姉さんが受付をしているらしいのは見えるけど尼子騒兵衛先生は何処だろう?と思っていましたらなんとその和服姿のお姉さんこそが尼子騒兵衛先生その人だったのです。すごく綺麗でした。子供の記憶なので美化されている部分もありますが一緒に行った親が2人共「あんな人が漫画を描いているとは思わなかった」「受付の人かと思っていた」と言っていたのを鮮明に覚えてますから当時恐らく30代半ばの尼子騒兵衛先生は客観的に見ても美人の部類であったと思われます。


それこそ陰気な漫画家という職業の中ではトップクラスに入る美形だったんだろうなぁと今でも思っています。その頃にもしネットが普及していればきっと2ちゃんねるあたりで晒されて一部で「落・乱…萌え〜」「騒タン萌え〜」というような評価がなされていて別の意味での「萌え漫画」という評価が下されていたのかも…とか考えてしまいます(笑)。


幸か不幸かそのような評価がされる事は無かったわけですが、僕はそれで良かったのだと何の根拠も無く思います。もう大人になって「落・乱」を読むこともないだろうかと思いますが、氏には是非これからも頑張って欲しいものです。