前日の日記の補足

本当は昨日の日記に盛り込もうとしていた内容でしたが忘れていたのでここで。


最近iPodの普及によって僕の周りでパソコンを使って音楽を楽しむ友達が増えているのですが、ひっかかる事が1つ。皆ファイル共有ソフトから曲を取ってきてるんです。僕が「ファイル共有ソフトで曲を取るなんて泥棒と一緒だぜ」と主張したトコロでうざがられるのが関の山なので敢えて何も言いませんがやっぱりひっかかるところがあるんです。昨日の日記にも書きましたが作家やクリエイターに金を払わずに作品を楽しむのは結果的にその分野を衰退させる事になります。本当に作品を愛しているのならせめてレンタルにするべきです(レンタルなら製作側に金が入る)。


少し前にレンタルで映画のDVDを借りていたら「ネットからタダで取ってこれるのに勿体無い」というような事を友達から言われました。ファイル共有ソフトがもたらした功罪にはここでは敢えて触れませんが上記のような言動が日常と化している現在は凄く悲しい事です。ファイル共有ソフトを使って曲や映画を取るという行為が「賢いエンターテイメントの楽しみ方」では無く「恥ずべき泥棒行為」である事をもっと世間に広めるべきだと思います。

好きなモノなら金を出して買え

大好きな東野圭吾のエッセイを買って読んでいたら「ブックオフや図書館で本を買ったり借りたりしている人はそれを決して賢い本の読み方などと思ってはいけない」というような内容の事が書かれていてその理由は「ブックオフや図書館を利用する人は本を出版している出版社や小説家に金を払って無い」というものでした。


この問題を少し掘り下げて書かれている文章もありましてその内容は「小説家には利益を出す小説家と利益を出さない小説家がいる。利益を出さない小説家は利益を出す小説家に食わせてもらっている。」というもので「利益を出さない小説家は利益を出す小説家に食わせてもらっている間に自分でも利益を出す小説家になれるように努力する」という事でした。これは出版社側から見たら「未来への投資」というところでしょうか。東野圭吾本人もデビューから10年間程は食わせてもらう立場にあって、その事に感謝していて自分の本が売れるようになった現在はその利益を食えない小説家にどんどん回して欲しいというような事が書かれていました。


なるほど、これは分かりやすい。今まで売れない作家はどうやって生活しているんだろ?という素朴な疑問がありましたがこれで少し謎が解けた気がします。現実の社会と同様に作家間のコミュニティ(と呼んでいいのか分かんないけど)で富の再分配が行われていたのですね。これは多分音楽、漫画、ゲームなど他の分野でも程度の差こそあれ同じような事がおこっているのではないでしょうか。昔どこぞのサイトでCDは最低10万枚売れないと利益が出ないと書いてあるのを見て10万枚もCDを売れないアーティストは腐るほどいるんだけどそういう人達どうしてるのだろうと思った事がありましたが、何の事は無い100万枚売るような人達に食わせてもらっていたんでしょう。


売れない人達に投資をするのは一見すると無駄な事だと思いがちですが、そうではないです。誰もがデビューから利益を出すほど高いパフォーマンスを見せれるわけがありません。小説で例えるなら現在売れっ子作家の仲間入りとなった東野圭吾もデビューから10年程は他の作家から食わせてもらわねばなりませんでした。そしてその時期があったからこそ現在面白い小説を多く書けるようになり売れるようになったのです(デビュー当時から面白かったというツッコミもあろうかと思いますがここでは敢えてそれを無視します)。「未来への投資」を馬鹿にしてはいけません。


冒頭でも書いた通りブックオフなど中古店で商品を購入する事は出版側に一銭も入りません。それで売れっ子の本、CD、漫画、ゲームが買えなくなる事はないでしょう。彼(彼女)らはそんな事で食えなくなる事はないから。しかし「未来への投資」は滞ります。利益が上げられなくなれば当然そうなります。そうなると近い将来どうなるか?有望な新人が出てくる確率が減ることになるので当然その分野は衰退します。


はっきり言って「中古で売買する」という行為そのものが作家、アーティスト、クリエイターの未来を潰しているのです。


人間だから中古ショップを全く利用するなとは言いません。しかし本当に本が好きなら、漫画が好きなら、音楽が好きなら、ゲームが好きなら、少し言い方を変えると、面白い本をもっと読みたいのなら、面白い漫画をもっと読みたいなら、良い曲をどんどん聴きたいのなら、面白いゲームをもっとやりたいなら、正規の価格で新品を買い使い終えた後もそれは大事にとっておきましょう、少なくとも自分が気に入ったものは。中古ショップを利用する事は文化の破壊であると認識するべきです。

ワンピースはジョジョに学ぶといいと思う

最近友人に「ワンピースはグランドラインに入る前の方が面白かった」と言ったら「最近の方が面白い」と返されて愕然としました。そうか…すっかり読んで無かったけど最近のワンピースはそんなに面白かったのか…。ジャンプ感想のサイトを回っていると確かに最近のワンピースは良いらしい。長ったるいバトルが終わった後の評判がよろしいようでどうやらワンピースはバトル以外は昔の水準を保っているようですね。まぁ最近のワンピースをまともに読んでない僕があの漫画にあれこれ言うのは根本的に間違っている気がしないでもないワケですが、生憎ここは僕のサイト。言いたい事を言わせてもらおうと思います。


ワンピースの何がダメかというとどう考えてもまずバトルがダメ過ぎでしょう。ワンピースのバトルはただ長いだけで長い長いバトルを消化した後に待ち受けているのは根性(ようなもの)で敵をボコボコにするルフィ君。冷静に分析するとそれは「根性」ですらなかったりするのですがそんな事は大きな問題ではないのでここでは保留としておきます。少年漫画なんですから最終的に主人公が勝つのはまぁ良いです。問題なのはその過程であるバトル描写が長々としている上に緊張感も無くてどうしようもなくつまらない事。人が死なないワンピースだからというのもありますが、お互いがダメージを与えている過程が本当にどうでもいい。設定上は一撃必殺級の技を持っていてそれを放っているにも関わらず何故か敵も味方もダメージを受けずちんたらちんたら殴りあい。敵の能力が変わろうが殴り方や殴られ方が変わるだけで何の面白味も無い。そして何ヶ月もかけて敵味方ともボロボロになったらルフィ君の主人公補正で「うおー」これじゃ面白いワケが無いです。せっかく「ゴムゴムの実」を始め魅力的な能力が揃っていて、しかも新しく魅力的な能力をいくらでも創れる世界観の意味がないです。


そこでジョジョの能力バトルを取り入れるワケですよ。ジョジョのように設定された能力は(少なくともその戦闘においては)忠実に反映させればいいと思います。スベスベの実で滑らされたら一切合切(その戦闘においては)物を掴む事ができない。ただこれだけの事を忠実に守ればいいです。物を掴めなくする能力なのにそれが効いてるにも関わらず武器を使われて負けるのはギャグかと思いましたよ。壁をスパンッと切れる能力者がいたらソイツに斬られた箇所は本当に切れさせればいいんです。骨が切れて皮1枚で繋がっている描写というのはそんなに難しいものではないでしょう。戦闘が終ったら何事も無かったかのようにくっついていてもいいんです(幸いルフィ海賊団には医者もいますしね)。少なくとも戦闘中は設定された能力に忠実に。ただこれだけです。これだけで絶対負けるハズの無い戦闘にも緊張感が生まれると思うのです。壁は切れるのにそれが直撃した人間が無傷なんてただのギャグですよ。そしてプロレスのようにお互いが技を受けきる戦闘描写を「受けまくる」じゃなく「かわしまくる」にすればいいと思います。ただカスっているだけなのにお互いボロボロ…これですよ。どうみても直撃しているにも関わらずダメージが無いから駄目なのです。「どうみても直撃している」の部分を「かわしまくっている」に変えるだけで戦闘が格段に面白くなるワケです。こんな戦闘描写を繰り返していけばジョジョのような至高の能力バトルも夢ではないと思うのです。


そしてもう1つダメなの時折挿入される回想シーン。物語のキーとなる話が多くて基本的に珠玉のエピソード揃いなのですがいかんせん少し長すぎる。これもジョジョのように1話で終らせればいいんですよ。1話で終らせたからと言って内容が薄くなるワケでなくてむしろ濃くなると思います。ジョジョの回想シーンなんてせいぜい1話程度のモノなのに最近のはどれもこれも印象に深く残るエピソードだらけです。むしろ1話にまとめる事によって濃密な話に昇華されて印象に残るのです。


結局ワンピースに求めるのは水増ししている部分を削り取るか水増しするなら少しは面白く味付けして欲しいというところでしょうか。The 男爵ディーノさんで「展開に煮詰まった漫画家は休載するか、バトルを長引かせて時間稼ぎをするしか無い」というエピソードが(いつかのジャンプ感想で)紹介されているのをみて僕も尾田先生に同情する部分はあります。ジャンプという雑誌も商業誌ですので人気作家ゆえの様々な制約はあるでしょう。水増しをするなとは言いませんがせめて最低限の味付けをして水増しをして欲しいと思うのです。今のワンピースは味が薄すぎて僕は飲めたもんじゃないと思っています。でも時折薄められてない回があったりしてそれを読んでないとなんか損をした気になってしまいます。尾田先生は本当は凄い面白い漫画が描ける才能を持った人なのだから後もうほんの少しばかり頑張って欲しいと思います。発想の天才である荒木先生になれとは言いませんがなろうと努力をして欲しいです。


僕がワンピースを再び読み始める日は来るのかなぁ。

完結しそうにない漫画

身近なところで適当にあげてみます。


HUNTER×HUNTER
早休載1年…(ぐらい)。たびたび休載してる事と富樫先生の天才性によって中身は漫画史上に残る面白さ。それだけに勿体無い。最悪小説みたいな形でいいから続きが知りたいです。


ベルセルク
この漫画はいつになったら終わるのか全く分からない。20巻辺りで終わりそうな気配もあったのに気付けば大風呂敷を広げて現在31巻刊行…。HUNTER×HUNTERと違ってちょくちょく連載しているのが救いだけど主人公サイドと敵勢力の如何ともし難い戦力差をどう埋めるのかという大きな問題が提示されているのにも関わらず、どうでもいい雑魚敵との戦闘描写で1年以上費やす進行の遅さ。正直後20年くらいは出口すら見えそうにないです。


・ワンピース
ベルセルクとほぼ同じ理由。進行速度はベルセルクの1、5倍くらいなのでそんなに心配はしてないものの最近の伏線の貼り方が尋常じゃないので回収にかかる年月を考えたら少し心配。ベルセルクにも言えるコトだけど長期連載によって作品のテンポが遅くなりすぎているのが気に喰わない。現在44巻刊行されているけど内容的には25巻くらいにまとめれるのが惜しいところ。80〜90巻あたりで完結と予想します。


こち亀
言わずもがな。キツイ言い方だけど引き際を見誤ってるような…。30年間一度も休まずに連載しているという情熱は素直に賞賛したいのだけど、この作品をこれ以上連載させる価値は果たしてあるのだろうか。秋本先生が肉体的に連載を断念するような事態にならない限り終わらないと思います。




身近にあるところではこんなところでしょうか。有名なトコロではガラスの仮面等々…。HUNTER×HUNTERは最悪このまま連載終了という形になりそうなので本当に恐いです。内容がいいだけに。せめてキメラアント編ぐらいは完結させて欲しいものです。

リアル鬼ごっこ

リアル鬼ごっこ (幻冬舎文庫)
題名だけは良く出来た作品。本当に非凡なものを感じます。題名だけは。中身は劣化版バトルロワイヤル、それも本家より圧倒的に劣っているので読むのがつらいつらい。作品そのものに対する評価は以上。


2年くらい前に題名につられて購入してしまったワケですが、読了後激しく後悔しました。少しネット界隈を検索してみると結構有名な作品みたいですね、勿論悪い意味で。そういえば大学入学直後に知人がこの小説の事を非常に面白おかしい小説として話のネタにしているのを目の当たりにして日本の大学生の知性のレベルというものに軽く絶望した記憶があります。信じられない…信じたく無いことですが、この小説を本気で支持する層というのは間違いなく存在します。しかし逆にこれは希望でもあるのではないか、と思うんですよね。小説というジャンルの顧客層はまだまだ開拓できるという意味で。

名作の条件

漫画、小説、ゲームととりあえず自分が知ってる身近な表現媒体を用いてる作品に関する事ですけど名作には如何なる条件があるかと考えた場合、一番大きな条件は「魅力的な世界観を描けているか」という点が一番大きいと思います。


漫画ならば絵柄やコマ割り、小説で言えば文体や構成、ゲームで言えば操作性やシステム、勿論それがしっかりしてないとそれだけで駄作になってしまうのですがそれが出来ていたからといってその作品が名作になる事は決してできないと思うのです。ここが良作と名作の分かれ道かと。「魅力的な世界観」それの世界はお花畑があって動物達が戯れる文字通り「魅力的」な世界でもいいし、草1つ無い荒廃した世界でもいいし、主人公とライバル…2人の抽象的な意味での「世界」でもいいし、とにかく人間の感性を揺さぶるようなものであればなんでもいいのです。万人ウケする必要は無いです。


ただこれは「頑張れば世界観を出せる」というレベルの代物でなく、やはり作り手のセンスの部分が大きいのかと。どんなに丁寧にキャラを描いても、どんなに丁寧に背景を描写しても、どんなに丁寧にグラフィックを描いても、「ただ丁寧なだけ」もしくは「ただ綺麗なだけ」という作品は吐いて捨てる程あります。こうなるとやはり「世界を描く」という事は努力だけでは届かないものなんだと改めて思います。作家やクリエイターのセンスの差はこうした部分に出るのでしょう。


これを前提とした上で少し書きたかった事もあるのですがそれはまた今度書くとします。

あひるの空が面白い

あひるの空(14) (講談社コミックス)

あひるの空(14) (講談社コミックス)

や、前々から面白いと思ってたんだけど書く機会が無かったんだ(あひるの空的台詞回し)。実は最近までスラムダンク全巻ちゃんと読んだ事無くて最近に漫画喫茶で全巻一気読みしたりしてる程度のバスケ漫画の知識なのですが…。しかしあらためてスラムダンク全巻読んだところでこの漫画、あの伝説の領域に辿り着けるほどのポテンシャルを有していると再認識。あ、スラムダンクが凡作って言ってるワケじゃないですよ念のため。


基本バスケ漫画で作者本人は「本格バスケ漫画を目指しているワケでなく基本ギャグ漫画」と初期の頃言ってたりしてたのですが、最近はすっかり「本格バスケ漫画」になっています(悪い意味でなく)。主人公は勿論の事ながらチームメイト、果ては普通の漫画ではスルーされているような準レギュラー陣のキャラクター背景まで丁寧に書き込んでいるのは非常に好感が持てます。普通の漫画ならそこは妥協するだろってとこまで踏み込んでいるのは後述するストーリーと同じく作者の頑固さと漫画に対する真摯な姿勢がうかがえるとこです。バスケに関しても(素人は全然知らない)いくつかの重要なルールを作中で解説してくれていてバスケを全く知らない人でも楽しめます。


そして何よりストーリーが一本道じゃないところが非常に良い。スラムダンクはバスケ初心者でありながら天才である主人公と少しワケ有りなチームメイトがほぼ一本道のレールの上を爽快に駆け抜けていく少年誌の王道ともいえるストーリーでしたがこの漫画はそうじゃない。登場人物のほぼ全員がマイナスからのスタートでそのまま駆け上がっていくのも全然アリで実際それだけで良作にはなるのにこの漫画のストーリーは3歩進んだら2歩下がるといったように成功と挫折を繰り返しながらちょっとずつ進んでいくというある意味でリアリティを追求したストーリー(そりゃ成功だけ繰り返すなんて現実ではあり得ないですよ)を模索。ただそれでもなんだかんだでちょっとずつ前に進んでいくのだろうなぁーとぼんやり構えていたら最近になって(といっても半年ぐらい前ですけど)いきなり今まで歩んできた道から崖に突き落として当初のスタート地点よりさらにマイナスの地点に話の筋を動かしちゃいました。これは凄い。現在14巻刊行されてるのですが、極論するとそのほとんど全巻がこのための前フリだったのです。マイナスがあったからこそプラスがより一層輝くというのは誰でも分かる事ですがそのマイナスの面を描くために巻数にして10巻以上を費やした漫画というのは未だかつてあったのでしょうか。(書いた後気付いたけどベルセルクとかはある意味そうかもしれませんね)


今までだけで細かい描写によってキャラが立って面白かったのに、挫折→成功という大きな流れが完結した時…つまりはクライマックスに達した時は冗談抜きでスラムダンクのクライマックスに匹敵するもしくはそれを上回る感動を得られるかもと感じています。


余談になりますが作者の日向武史の前作でありデビュー作である「Howling」は1話を書いた直後に打ち切りを伝えられたそうで。「Howling」はたまに流し読みしてた程度ですが連載が終了した時僕は「あーこの人はもう漫画を描かないだろうなぁ」と漠然と感じていて実際本人も「漫画家を辞める決心をしていいた」と語っています。「Howling」はなにかそういう得体の知れない悲壮感が漂う漫画でした。その「Howling」を描いた作者が再び日の目を見る事ができて「あー良かったなぁ」と何か暖かい気持ちになってしまいます。


あともう1つ。1〜12巻は主人公と主人公の母親の物語という側面も持っているワケですが、その結末を読んだあとまた最初から読み直したりなんかすると伏線伏線が非常に悲しい。クライマックスなんか何回読んでも泣いてしまいます。本当にこの漫画は凄いなぁっと。構成だけで言ったら少年誌…いや青年誌を含めても現在の漫画家でNO1じゃなかろうか。